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女性データサイエンティスト育成で公衆衛生向上へ | 武田薬品

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女性データサイエンティスト育成で公衆衛生向上へ

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2025年6月10日
アナ・ンドノさん、ENGAGEプログラム修了生

アナ・ンドノさん、ENGAGEプログラム修了生

「私は岐路に立っていました。STEM分野で自分の将来に確信が持てず、諦めかけていました」

大学の学士課程を修了後、アナ・ンドノさんは、STEM(科学、技術、工学、数学)分野でキャリアを見いだそうと、自身の選択肢を目の前に並べていました。しかし、スキルを生かしたいと思いながらも、どこから手を付けるべきか分かりませんでした。

「そんなときにENGAGEのポスターを偶然見かけ、『あなたは理工系女子?』という問いかけが目に留まりました」とアナさんは振り返ります。「その問いかけに自分自身が重なりました。データサイエンスに興味があった私にとって、このプログラムはぴったりでした」

ENGAGE(Enabling Girls in AI and Growing Expertise)は、公衆衛生上の課題に対応するため、データサイエンスと機械学習のスキルを女性に習得してもらうケニア初のプログラムです。ナイロビ大学が主導し、タケダが資金提供を行うこのプログラムは、ナイロビ大学熱帯病・感染症研究所の所長で、ENGAGEの主任研究員でもあるジュリアス・オユギ教授と、カリフォルニア大学サンフランシスコ校の仲間によって考案されたものです。オユギ教授いわく、このアイディアは、COVID-19のパンデミック初期に、行政がウイルスの流行を予測するためにデータサイエンティストを見つけようとしたものの、該当者がなかなか見つからなかった経験から生まれました。

ジュリアス・オユギ教授、ENGAGE主任研究員

ジュリアス・オユギ教授、ENGAGE主任研究員

「COVID-19のような公衆衛生上の課題に対処するためにデータサイエンスやAIが活用されていました。そこで、このプログラムを作ろうと思い立ちました」とオユギ教授は言います。「行政の努力によりチームはできましたが、そこに参加した女性はわずかでした。そこで私は、恵まれない環境によってこうしたプログラムに参加できない女性にスキルを身に着けてもらえば、データサイエンティストの不足にも対処できるのではと考えました」

タケダは、毎年行っているグローバルCSRプログラムの従業員投票で2023年にENGAGEを選出し、2024年から5年間にわたる支援を開始しました。プログラムの初年度は、ケニア全土から90名の若い女性たちが集まり、20日間の研修コースを修了しました。参加者の多くは恵まれない環境にある女性たちでした。彼女たちはここで、コーディングや統計学、AIを含め、データサイエンスと公衆衛生のスキルを習得しました。

研修コース修了後、参加者たちは医療施設での勤務を通じて、習得したスキルを実際の現場に生かしています。実際の医療データに触れ、公衆衛生上の課題について実践的な知識を深められる機会にもなっています。

ヴェロニカ・ムウェンデさん、ENGAGEプログラム修了生

ヴェロニカ・ムウェンデさん、ENGAGEプログラム修了生

ヴェロニカ・ムウェンデさんは、このプログラムの最初の修了生の一人です。

「データを深掘りしてその中にある本質を導き出すことから、実際のデータを使って予測モデルをトレーニングすることまで、プログラムで学んだ内容は非常に充実していました」とヴェロニカさんは述べています。「中でもインターンシップで実際のデータセットを扱ったことは、私たちの知識を実践で生かす上で重要な経験になりました」

ENGAGEプログラムの実践的なアプローチは、すばらしい成果を上げており、現在では複数の参加者が、重大な健康課題に対処するための予測モデルを開発しています。

「妊娠中の一般的な合併症である、妊娠高血圧腎症に焦点を当てたプロジェクトに取り組んだ参加者もいました」とオユギ教授は述べています。「そこで彼女は、妊娠高血圧腎症の発症リスクの高い妊婦タイプを特定する予測モデルを考案しました」

またプログラム参加者たちは、体重やメンタルヘルスに関連する健康課題に対処するための予測モデルの構築にも取り組んでいます。

タケダのグローバルCSR ヘッドである安藤 寿絵は、ENGAGEプログラムと、最先端技術を活用し、差し迫った世界的な健康課題を解決するというタケダの姿勢は共通していると指摘します。

安藤は「タケダでは、デジタル技術によりイノベーションが加速しています」と述べ、次のように続けました。「ENGAGEのようなプログラムへの支援は、医薬品の提供に留まらない社会貢献を可能にするものです。タケダには240年以上の歴史があります。そんな私たちだからこそ、長期的な視点をもって解決策を持続可能なものにできるのです」

プログラムが2年目を迎えるにあたり、プロジェクトチームはその対象範囲と影響力を拡大しようとしています。2028年まではタケダからの支援があるため、同プログラムでは、現在の大学生向けのコースに加えて、高校生向けの初級研修も実施する予定です。

オユギ教授は、このプログラムはさらに拡大できると考えています。

「このプログラムは、ウガンダやタンザニアなどの近隣諸国でも再現できるはずです」とオユギ教授は言います。「AIとデータサイエンスは、公衆衛生の課題を解決する上でますます重要なツールになってきています。そしてこの地域には、疾病に関する共通した課題がいくつもあります」

アナさんは、ENGAGEプログラムがさらに進歩すれば、アフリカの地域医療にメリットがあるだけでなく、プログラム参加者に及ぶ影響も大きくなっていくだろうと感じています。つまり、修了生が新しいスキルを獲得していくことに触発され、多くの学部卒業生がデータサイエンス分野での就職や進学を目指すようになります。そして、このプログラムの目標である、ケニアでのデータサイエンティストの増加につながります。STEM分野での進路に不安を感じていたアナさんは、このプログラムに参加することで、進むべき方向と自信を見出すことができました。

「単なる研修を受けられる場ではなく、力を得られる場です」とアナさんは言います。「好奇心を忘れず、学びのプロセスを楽しんでください。そうすれば、このプログラムが私の人生を変えたように、あなたの人生も変わるでしょう」

タケダの価値観とグローバルヘルスを語るオユギ教授の動画をご覧ください。

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